「壱の会」が宮下初子先生のご師事を仰ぎ、日本の総合芸術といわれる茶の湯の世界をのぞき始めて、十年が経ちました。月に一度の勉強会ということで先生に命名していただき、先生をはじめ有志の方々のご支援を得ながら、大切に育てて参りました。
四百年にわたって途絶えることなく続く茶の湯の文化に「壱の会」を通じて触れることで、「壱の会」の会員は謙虚な気持ちになり、また視野を広げることができたと感じています。例えば何世紀も前に作られた茶碗を拝見すると、その茶碗が今でもこうして私たちの目の前に存在しているという事実に自ずと厳かな気持ちになります。どんな歴史の中で、茶碗は何を見てきたのだろう、そしていつか私たちがこの世を去っても、茶碗は存在し続け、この世の何を見ていくのだろうかと想像が広がります。
また、茶の湯は私たちの人生観にも大きな影響を与えています。一見手に入れたように思えるものも、実は単にお借りしているものに過ぎないとの見方を持つことができたりすることもあるからです。
一期一会の精神で心を込めてお客様をもてなす茶の湯の文化は、現代に生きる私たちが失いかけているものを思い起こさせてくれます。それは日本の四季の移ろいであり、工夫を重ねて築き上げられてきた私たちの生活様式などであります。
残念ながら宮下先生は、2019年7月に不帰の客となってしまいました。宮下先生が人生をかけて傾倒された茶の湯への志を継承し、少しでも世の中の役に立つ取り組みをしていきたいと思っています。宮下先生のご遺徳を偲びつつ、先生のご指導のもとこれまで学んできたことを皆様と分かち合うとともに、「壱の会」の裾野を広げたいとの願いを込めて、ここにご案内をさせていただきます。